夢彩人

東京都文京区

弥生美術館

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Yayoi Museum

19945

 

最初に取り上げる美術館を何処にしようかと少し迷いましたが、東京に来て最初に訪れた弥生美術館・竹久夢二美術館にすることにしました。

地下鉄千代田線の根津駅を降りて言問通り(コトトイドオリ)の弥生坂(ヤヨイザカ)を西南の方向に上って行くと400m位のところに三つ角があり、ここに美術館への標識が立っています。左に曲がって200m位行くと左手に弥生美術館があります。右手は東大の弥生門です。この門からでも夏目漱石の小説に出てくる三四郎池に行くことができます。弥生美術館の横に竹久夢二美術館があります。入口は弥生美術館と同じで中でつながっています。

弥生美術館は1984年(昭和59年)6月1日に、弁護士の鹿野琢見(カノ タクミ)氏により創設されました。

昭和4年、当時一世を風靡していた挿絵画家の高畠華宵 (タカバタケ カショウ)が描いた一枚の絵「さらば故郷!」と9才の鹿野少年との出会いが、やがて華宵の晩年を看取る運命的結び付きとなり、その作品の多くを収集することになりました。1965年兵庫県明石の老人ホームに孤独の身を寄せていた華宵を知り、自宅に引き取り翌年に華宵が亡くなるまで面倒をみました。華宵からは作品や著作権を譲り受け、かくしてできあがったのが赤いレンガのひっそりとした佇まいの弥生美術館です。

その後、1990年11月3日には竹久夢二美術館も独立して創設されました。1918年(大正7年)から4年間ほど夢二が暮らした本郷菊富士ホテルを模して建てられています。

展示内容は挿絵原画はもちろんのこと、当時の雑誌などにもおよび、夢二の広告グラフィックや書簡、華宵便箋などが数多く展示されています。華宵や夢二のほかに蕗谷虹児  (フキヤ コウジ) 、中原淳一 (ナカハラ ジュンイチ)、加藤まさおなど明治から昭和に活躍した挿し絵画家たちの作品が展示されています。

夢二は波乱に富んだ人生を送り49才11ケ月で生涯を閉じました。そして残された多くの絵と詩は人生そのものを感覚化し、美的な瞬間としてとらえつづけています。生まれは岡山県ですが、生涯の大半は東京で過ごしています。夢二の最愛の女性といわれる笠井彦乃 (カサイ ヒコノ)は1915年頃本郷菊坂にある女子美術学校に通っていましたが、呉服橋にある夢二の店である港屋を訪れ夢二と深く愛し合う仲となり、2人は本郷や近くの不忍池(シノバズノイケ) の付近をよく散歩したそうです。この彦乃は1920年1月16日23才9ケ月の短い生涯を閉じています。「最後の手紙」という作品は1927年(昭和2年)9月この彦乃を偲び、往時の思い出を歌ったものと言われています。大正ロマンの先駆とも源流ともいわれる夢二の作品を存分に鑑賞することができます。

夢二は1930年5月「榛名山美術研究所につき」という宣言文を掲げ、各地方の産業美術の研究を主にした学校の運営を計画しています。しかし、実現には至っていません。このあたりのことについては、群馬県の竹久夢二伊香保記念館を紹介するときに述べたいと思います。

美術館の入口には夢二にちなむ併設の小綺麗な喫茶店「みなとや」があります。ここで一息入れてからこの辺りを散策されるのも一つです。

 

(サトウハチロー記念館)

先程の言問通りを根津駅の方向に150m行ったところに少し分かりにくい標識があり、そこを左に曲がり50mほど行くと右側にサトウハチロー記念館があります。火曜日と土曜日であれば午後1時から5時まで開館しているので立ち寄ってみることをお薦めします。

この地の弥生という地名は弥生式文化発祥の地として、由緒ある土地柄を誇っています。サトウハチローは1937年からこの地に移っています。終戦後の1年ほど父である紅禄夫妻もこの家の2階に住んでいたことがあります。1957年に創刊されたサトウハチロー門下生による抒情詩と童謡の月刊誌「木曜手帳」は、今まで1度も休むことなく発行されているとのことです。

展示室には、サトウハチローの遺品、書簡、著作物、写真、賞状などが収蔵されています。「ふたりでみるものは すべて美しくみえる」、「風景の中に君を置く 思い出を置く」などすばらしい詩が展示されています。あの「長崎の鐘」の作詞もサトウハチローです。本の著者である永井博士に出した手紙も展示されています。

 

こよなく晴れた 青空を

悲しと思う せつなさよ

うねりの波の 人の世に

はかなく生きる 野の花よ

なぐさめ はげまし 長崎の

ああ 長崎の鐘がなる

 

召されて妻は 天国へ

別れてひとり 旅立ちぬ

かたみに残る ロザリオの

鎖に白き わが涙

なぐさめ はげまし 長崎の

ああ 長崎の鐘が鳴る

 

私はやさしい涙とやわらかな詩情が溢れる詩集「美しきためいき」を手に入れました。

 

(根津神社)

この記念館を出て右に行くと途中階段がありますが、つつじの花の美しい根津神社に行くことができます。300年以上の歴史をもつ神社であり、つつじケ岡と呼ばれる花の名園でも有名です。数十種のツツジ2千株が咲き揃う4月末から5月初めが見頃です。花が散った後も緑の美しい神社です。

おみくじを引くと福銭が付いてきます。「御縁の深きを祈ってお持ちください。来春神前にお納め願います。」と書いてありました。

 

 

所在地: 113-0032 東京都文京区弥生2−4−3

Tel: 03-3812-0012

 

 

弥生美術館・竹久夢二美術館 公式HP

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