|
|
|
神奈川県川崎市 |
中村正義の美術館 |
☆☆☆☆☆ |
|
NAKAMURA
MASAYOSHI MUSEUM |
1994年10月 |
今回は、川崎市麻生区の住宅街にある「中村正義の美術館」を紹介します。 小田急線読売ランド前駅から、京王よみうりランド行バスに乗り、細山停留所で下車して、バスの進行方向に少し歩くと美術館への標識があります。そこを左に曲がって真っすぐ行くと左にカーブする坂道の右側に白い方形の建物の中村正義(マサヨシ)の美術館があります。読売ランド前駅から15分ほどです。バス停までの行き方は、分かりにくいので、駅で聞かれるのがよいと思います。タクシ−を利用する場合は、乗り場がありませんので、途中で拾う以外ありません。 この美術館は、中村正義の画業とその人となりを広く世に知ってもらいたいとの思いで、あや夫人と長女の倫子(ノリコ) さんが1988年9月に開館しました。中村正義が制作を続け、生活をしていた住居をそのまま美術館にしたものです。倫子さんが館長を務めています。副館長は、倫子さんの旦那さんである髭を生やした中瀬真一郎さんです。中瀬さんは、10月にこの美術館で開催された「朝倉摂さんをお招きして」の講演会の司会をしていましたが、芸術家らしく味のある話し方をされていました。倫子さんもハンサムであったお父様に似て美しい方です。 中村正義は1961年1月にこの地に移り住み、52年の生涯を終えるまでの16年間、ここで過ごしました。今の建物は、建築家の篠原一男氏によって設計されたものです。朝倉摂さんの家を訪問した中村正義が天井の高い直方形の建物が気に入って、摂さんに設計者である篠原さんを紹介してもらったそうです。 この美術館の収蔵品は中村正義の「顔」を中心に、「仏画」「花」「舞子」「風景」とそれらの下図、デッサンなど約300点と、異色の才をふるいながらも世に知られることなく逝った三上誠や何にとらわれることなく我道を歩み続けた佐熊桂一郎の作品などです。そのうちの200点が中村正義の顔の絵だそうです。このように顔の絵や仏画が多いのは、人間が好きであったことと病と戦うことの長かったことによるのでと言われています。 中村正義は、1924年5月13日に豊橋市で生まれています。22歳で日展に初入選していますが、この入選を知る事無く母のてふさんはこの年に亡くなっています。病気の母にりんご一つ買ってやれなかった生活であったとのことです。23歳でふみさんと結婚し、1950年には、26歳で日展で特選、朝倉賞を受賞しています。そして翌年には日展無鑑査となるという、すぐれた日本画家でありました。しかし、28歳のとき肺結核のため入院し、手術をおこなっています。ふみさんと別れて、あやさんと再婚しています。彼は、権威、権力に屈することなく勇気を持って自由な創作活動にあたるという思想のもと、体制、安定、マンネリによって生ずる淀みを告発し、更にそれをとりはらうための自由への挑戦を試みています。 1961年37歳のとき、名古屋から川崎市細山の古い茅葺きの家を買って、この美術館のある場所に転居しています。その頃は、道路は、舗装されていない砂利道で、水は井戸であったそうです。そして、その年に日展を脱退して、以後無所属となっています。その後、舞台や映画の仕事なども含めて自由で、力強い作品を制作し続けましたが、1977年52歳で肺癌のため亡くなっています。 展示内容は、ひと月を単位に変え、年2度ほど中村正義以外の企画を立てています。7月中旬から8月いっぱいの夏休みと、12月初旬から3月初めまでは冬休みです。今は「山下菊二と正義」展が開かれています。ノ−ベル賞作家大江健三郎氏の文庫本の装丁はこの山下菊二によるものです。この企画は、大江氏のノ−ベル賞が決まる前から決まっていたものです。 「顔・顔の会」という会員組織もあり、入会すると会員と同伴者2名まで無料入館できます。私は「顔・顔の会」の会員ではありませんが、いつも案内を送ってくれます。最初に訪問したときは、閉館間際であったのですが、うちは個人の美術館なので時間が過ぎても見て頂けますと言って快く入れてくれ、美しい2人の女性は、お茶まで出してくれました。東京周辺の美術館を100件以上回ったと話したらびっくりしていました。そのうちの1人は、館長の倫子さんであることが2回目に訪問した時に分かりました。 「顔・顔かわらばん」が年2回発行されています。中村正義について色々と知ることができます。「花」について夫人のあやさんがつぎのように書いています。
「1963年頃から真っ赤なバラを描きだしました。荒いタッチで ぐいぐい描かれた壷の薔薇は、大輪で重なり合うように競い合って いました。それだけでも圧倒される強い画面に、大きな平筆いっぱ いに含ませた朱を、サ−ッサッと入れると、不思議な魅力を湛えて 薔薇の完成です。・・・・ バラは時々は黄や白も描きましたが、やっぱり情熱的な赤でした。 側で刻々に変化していく薔薇を見ているのは、心踊る楽しさでした。
・・・」
(生田緑地) 読売ランド前駅から2つ目の向ケ丘遊園駅南口を出て歩いて20分ほどのところに生田緑地があります。公園内には、全国から古い民家を集めた日本民家園や伝統工芸館、プラネタリウムのある青少年科学館などの施設があります。今は、木々の葉が紅く色づいています。都会を離れて過ごすことができる場所です。
|
||
|
所在地:〒215 神奈川県川崎市麻生区細山7−2−8 Tel:044-953-4936 |
|
|
中村正義の美術館 公式HP |
91 |
|
|