夢彩人

静岡県熱海市

MOA美術館

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MOA MUSEUM OF ART

19951

 

今回は、熱海のMOA美術館と真鶴半島にある中川一政美術館を紹介します。

JR東海道線・新幹線の熱海駅を降りて、バスのC番のりばからMOA美術館行きに乗ると8分でMOA美術館のエスカレ−タ入口に行くことができます。タクシ−に乗るとMOA美術館の一番高い入口である3階入口まで5分で行くことができます。歩くと30分ほどかかります。行きは坂道ですので、歩くのは少しきついかもしれません。

MOA美術館は、世界救世教の教組である岡田茂吉の生誕百年を記念する事業として1982年に開館されました。熱海市桃山の一角7万坪の起伏のある敷地の最頂部に建設されています。MOAとは「モキチ・オカダ・アソシエ−ション」の略号です。本館の前面に広がる相模灘とそこに浮かぶ初島や伊豆大島、真鶴岬を見渡すことができます。背後には、箱根の十国峠へと山並みが続きます。また四季折々の花が咲く庭園と木々の緑の中に、インド産の砂岩に外装された美術館があります。

当館の所蔵品は、東洋古美術を中心に絵画、陶磁器、工芸などの各分野に渡っています。尾形光琳の「紅白梅図屏風」や野々村仁清の「色絵藤花文茶壷」などが代表的作品です。最近は、西洋絵画や彫刻の収集にも積極的です。優れた美術品の展示に加えて、茶室や能楽堂を設け、茶道や伝統芸能の観賞会の開催をはかるなど、美術を中心に幅広い文化活動が展開できる芸術の総合的施設となっています。

美術館は、美術館エスカレ−タと美術館本館の二つに分けられます。本館に向かうトンネル式の通路には、総延長200メ−トル、高低差50メ−トルの上り下りそれぞれ4基のエスカレ−タが中央の階段をはさんで設置されています。通路の天井は、襞状のア−チとなっており、そのア−チがつくる陰影と快い音楽が幻想の雰囲気を高めています。エスカレ−タ通路の中間地点には、多目的に活用されている円形ホ−ルがあります。エスカレ−タ通路を通り抜けると、中央階段・ムア広場に出ます。ここからは、地上3階建ての美術館本館を正面に見上げることができます。またヘンリ−・ムア作の「王と王妃」のブロンズ像画が展示され、その左右には木々の緑に縁取られた広い芝生の前庭がひろがっています。中央階段を上がり、2階正面玄関を入ると、エントランス・ロビ−となります。ここには、アリスティド・マイヨ−ルのブロンズ女性像「春」がおかれています。エントランス・ロビ−は、すぐメ−ン・ロビ−につながります。ここからは、ガラス越しに、相模灘の雄大な景色を一望できます。メ−ン・ロビ−に隣接する一室には、黄金の茶室が展示されています。これは、豊臣秀吉の創意による黄金づくりの3畳の組立て式茶室で、当時の諸記録に基づき、数寄屋建築の権威の監修によって学術的に復元されたものだそうです。

岡田茂吉は、1882年(明治15年)12月23日に東京浅草に生まれました。茂吉は、社会全体が幸福を享受できる世界の実現にあたって、基本を人間の心身の健康達成におき、そのひとつの方法として芸術を取り上げ、美によって人間の品性を高めるという独特の美術思想を確立し、多くの優れた美術品を蒐集し、それを一般に公開するために美術館を建設しました。

茂吉は、新しい文明の基準として「健富和」「真善美」を掲げ、この実現に向けて取り組みました。ひとつには、人工美と自然美がマッチした理想世界のモデルをつくることによって、それを世界に拡大するというものです。箱根や熱海に見られる庭園、そして美の殿堂たるMOA美術館や箱根美術館はその表れです。

美術館というものは、来館者が優れた美術品を心ゆくまで観賞できる場であると同時に、美術館を囲む自然美をも楽しむことができる環境になければならないということです。

「吾等の言う地上天国なるものを最も判り易くいえば美の世界である。即ち人間にあっては心の美即ち精神美である。勿論、言葉も行動も美であらねばならない。これが個人美であり、個人美が押拡がって社会美が生まれる。」と言っています。

 

(中川一政美術館)

JR東海道線真鶴駅からバスで15分、サボテン公園の左横に真鶴町立中川一政美術館があります。この美術館は、1989年(平成元年)3月に開館しました。日本画壇の重鎮であり、文化勲章受賞者の中川一政(カズマサ) 画伯から寄贈された自作の油彩、岩彩、書等の作品を中心に展示されています。真鶴半島自然公園の樹林に囲まれ、第15回吉田五十八賞(建築設計)を受賞した落ち着いた雰囲気の建物です。

真鶴は一政がアトリエを構えてその活動の中心としたところです。この美術館に収蔵、展示されている作品は、強烈な色彩に満ちています。「福浦(フクラ) 」「駒ケ岳」「薔薇」「向日葵」などの一連のシリ−ズが展示されています。特に駒ケ岳は一政にとって重要なモチ−フで、駒ケ岳をテ−マにした作品は30点以上あると言われています。「駒ケ岳」という随筆のなかで「ああ、美術のかみよ! もう駒ケ岳を描くのはよせというのか。それ以上はお前にはできないからやめろというのであろうか。」と書いています。20年にわたって、福浦の堤防にイ−ゼルを立て、描き続け、周りの人たちは、その一政画伯の姿が一本の杭に見えるとうわさしたとのことです。薔薇や向日葵も一政の心をとらえたモチ−フです。庭に何百本もの向日葵を植えて、心の動きを向日葵に描き続けましたが、1991年に97歳11ヵ月の生涯を閉じました。

中川一政全文集「美術の眺め」で画の見方について次のように書いています。

 

画の見方と云えば画をきゅうくつに考えないで見ることです。

富士山を見てよい景色だと思います。しかしよい景色は富士山ばかりではありません。

富士山ばかりをよい景色と考えすぎると、天の橋立へ来るとわからなくなります。

そういう風にきめずに見ることです。

こういう風にすれば観賞の範囲が広くなります。

それからわからないものはわからないとしておいて、わかるものを先ず味わって行けばよいのです。

人というのは其人の心の深さだけしか見る事が出来ません。深い心の作品を見るにも自分の程度だけしかわかりません。いつ迄みていてもよい絵というのは、自分の心が成長して行ってもまだ奥底のわからぬ絵のことです。自分にとけぬ謎のある絵です。

 

 

所在地:413 静岡県熱海市桃山町26−2

Tel:0557-84-2511

 

 

MOA美術館 公式HP

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