植物界の分類
■生物と無生物
・生物(せいぶつ)
生物が無生物から区別される一般的な特徴として、生物は、自己増殖能力、エネルギー変換能力、恒常性(ホメオスタシス)維持能力という3つの能力をもっている。
・無生物(むせいぶつ)
石や水などのように、生命がなく生活機能をもたないもの。
■生物の分類(三ドメイン説・六界説)
真正細菌ドメイン(
Bacteria)−− 細菌界(
Bacteria)
古細菌ドメイン(Archaea)−−− 古細菌界(
Archaea)
真核生物ドメイン(Eukaryota)−−原生生物界(Protista)
菌類界(Fungi)
動物界(Animalia)
植物界(Plantae)
■植物界の分類
・新エングラー体系(しんエングラーたいけい)
ドイツのエングラー(Adolf Engler; 1844-1930)とプランテル(Karl Prantl; 1888-1911)は被子植物に花被の有無と、花葉の離生・合生を重視した分類方式を採用し種子植物の進化の方向を考え、花の部分構造でより進化とした進化型を後にして配列した。後に、新しい知見も取り入れられ、新エングラー方式に発展した。
この分類は直感的に分かりやすいため、市販の植物図鑑等で今でもよく使われる。生物の教科書の分類もこれである。この体系の特徴は、被子植物において、おしべ1つめしべ1つといった、単純な構造の花を原始的な形態とみなし、そのような植物分類群から複雑な構造の花を持つ群へと進化したものと考えて、系統的に配列分類する。
分類体系
裸子植物門(Gymnospermae)
ソテツ綱(Cycadopsida)
マツ綱(Coniferopsida)
イチイ綱(Taxopsida)
グネツム綱(Chlamydospermae)
被子植物門(Angiospermae)
双子葉植物綱(Dicotyledoneae)
古生花被植物亜綱(Archichlamydeae)
合弁花植物亜綱(Sympetalae)
単子葉植物綱(Monocotyledoneae)
新エングラー体系以降に作成されたより新しい分類体系に、クロンキスト体系、APG植物分類体系がある。
・クロンキスト体系(クロンキストたいけい)
1981年、1988年にクロンキスト(Arthur Cronquist)の提唱した植物分類法。
双子葉植物を次の6つの亜綱(あこう)に分類する。
被子植物門
双子葉植物綱
モクレン亜綱(Magnoliidae)
マンサク亜綱(Hamamelidae)
ナデシコ亜綱(Caryophyllidae)
ビワモドキ亜綱(Dilleniidae)
バラ亜綱(Rosidae)
キク亜綱(Asteridae)
単子葉植物綱
オモダカ亜綱(Alismatidae)
ヤシ亜綱(Arecidae)
ツユクサ亜綱(Commelinidae)
ショウガ亜綱(Zingiberidae)
ユリ亜綱(Liliidae)
クロンキスト体系では、上記の順を植物の進化した順番として表している。
・APG植物分類体系(えーぴーじーしょくぶつぶんるいたいけい)
1990年代に登場した被子植物の新しい分類体系である。 旧来分類法の新エングラー体系やクロンキスト体系がマクロ形態的な仮説を根拠に演繹的に分類体系を作り上げたのに対して、ミクロなゲノム解析から実証的に分類体系を構築するものであり、根本的に異なる分類手法である。APG(Angiosperm Phylogeny Group: 被子植物系統発生グループ)とは、この分類を実行する植物学者の団体名である。
・現在の一般的に使用されている生物分類
<和名> <英名> <ラテン語名> <ローズマリーの場合>
ドメイン domain regio 真核生物(Eukaryota)
界(かい) kingdom regnum 植物界(Plantae)
門(もん) division divisio 被子植物門(Magnoliophyta)
綱(こう) class classis 双子葉植物綱(Magnoliopolida)
目(もく) order ordo シソ目(Lamiales)
科(か) family familia シソ科(Lamiaceae)
属(ぞく) genus genus ローズマリー属(
Rosemarinus)
種(しゅ) species species
Rosemarinus officinalis
・門の場合:陸上植物の接尾辞は -phyta
・綱の場合:陸上植物の接尾辞は -opsida
・目の場合:植物の接尾辞は -ales
・科の場合:植物の接尾辞は -aceae (例外が認められている)
・植物界の現在の分類(9門)
(コケ植物)
コケ植物門
(シダ植物)
シダ植物門
ヒカゲノカズラ門
トクサ門
(種子植物)
(裸子植物)
イチョウ門
ソテツ門
マオウ門
球果植物門
(被子植物)
被子植物門(モクレン門)
・本ブログで使用する植物界の体型
コケ植物門−−セン(蘚)綱
タイ(苔)綱
ツノゴケ綱
シダ植物門−−リニア綱
トリメロフイトン綱
ゾステロフィルム綱
マツバラン綱
ヒカゲノカズラ綱
トクサ綱
シダ綱
前裸子植物綱
裸子植物門−−ソテツ綱
イチョウ綱
マツ綱
グネツム綱
被子植物門−−双子葉植物綱
単子葉植物綱
■用語の説明
・生物(せいぶつ)
生物が無生物から区別される一般的な特徴として、生物は、自己増殖能力、エネルギー変換能力、恒常性(ホメオスタシス)維持能力という3つの能力をもっている。
生物の個体は何らかの形の自己複製(自己増殖)によりその祖先(親)から誕生し、ほとんどは恒常性維持の破綻とともに死を迎える。その間の時間は、生物は外部から物質を取り入れ、体内で化学変化させ、生じるエネルギーで自らの体の状態を一定に維持し、あるいは発展させ(恒常性維持、自己保存)、不用な物質を外に捨てる(エネルギー変換)、代謝)。この誕生と死の間のエネルギーを変換しながら活動している状態が生きているということである。
・真核生物(しんかくせいぶつ)
動物、植物、菌類、原生生物など、身体を構成する細胞の中に細胞核と呼ばれる構造を有する生物のことである。真核生物以外の生物は原核生物と呼ばれる。
・動物(どうぶつ)
運動能力と感覚を持つ多細胞生物である真核生物。
・植物(しょくぶつ)
真核生物であり、多細胞で細胞壁を持ち、そして葉緑体で光合成を行なう。
・種子植物(しゅししょくぶつ)
植物のうち、主として種子によって繁殖するもの。大きく、裸子植物と被子植物に分けられる。
・裸子植物(らししょくぶつ)
種子植物のうち、胚珠が裸になっているもののこと。
・被子植物(ひししょくぶつ)
種子植物のうち、胚珠が子房や花などにより被われているもののこと。被子植物は裸子植物より分化し進化したものであり、地球上の植物の中では最も新しく最も進化した群とされる。被子植物は分類学上は被子植物門と呼ばれ、これは大きく二綱に分けられており、それぞれ双子葉植物綱と単子葉植物綱と呼ばれる。
・双子葉植物(そうしようしょくぶつ)
被子植物のうち、双子葉植物とは、2枚の初期葉もしくは子葉をもつ植物のことである。特徴は
子葉:2個
根:初めは1本の太い根(主根)があり、それから多くの根(支根)をのばす。
茎:形成層と呼ばれる特殊な細胞群があり、その分裂によって茎が太くなる。
葉:網状脈を持ち、葉身は鋸歯があったり、裂けていて形の変化に富む。
花:花の各部は2、4、5が、その倍数よりなる。
・単子葉植物(たんしようしょくぶつ)
被子植物のうち、1枚の子葉を持つことで特徴づけられている植物の一群のことであり、双子葉植物と対比される。
子葉:1個
根:はじめから多くのひげ根を出す。主根というものはない。
茎:樹木はごく少数。形成層はなく、茎はあとから太くなることはない。
葉:平行脈をもち、葉身は細長く、鋸歯がなく、裂けることもすくないく、形の変化に乏しい。葉の基部がさやとなり、茎を包むものが多い。
花:花の各部は3またはその倍数よりなり、多くは花弁とがくの区別がはっきりしない。
・離弁花(りべんか)
すべての花びらが分離している花。桜・アブラナ・エンドウなど。⇔合弁花。
・合弁花(ごうべんか)
花弁が一部または全部つながっている花。管状花・舌状花・鐘形花・唇形花などが含まれる。⇔離弁花。